私たちは、「憲法改正手続き法=国民投票法」の成立を許さない  

                         〜2007年4月 むさしの憲法市民フォーラムアピール〜


連休明けの国会で「国民投票法」の審議が大詰めを迎えています。これは、憲法改正のための「国民投票」の手続きを定める法律で、提案する政府・与党は、「単なる手続き法にすぎない。これまで決めてこなかったことこそ怠慢」としています。

しかし、はたして本当に、「手続きを定めるだけ」で終わる話なのでしょうか?

自民党は、立党50周年にあたる一昨年11月、「新憲法草案」なるものを発表していますし、安倍首相は、ことあるがごとに「自分の任期中に憲法改正をやりとげたい」と公言しています。

これらを併せて考えた時、今回の国民投票法制定が近い将来の憲法改正へ向けた準備作業であることは、火を見るより明らかと言えそうです。


では、安倍首相を始めとする政府・与党が、これほど前のめりになって、憲法改正を目指す理由は、一体どこにあるのでしょう?

安倍首相は、「憲法を改正してこそ、敗戦国としてアメリカに押しつけられた戦後レジームを脱却し、日本を自立させることができる」などと言っています。

しかし、憲法改正によって憲法9条2項の「戦力の不保持と交戦権の放棄」の理念が改定され、その結果「自衛隊を自衛軍にして、アメリカに追従し、一緒に外国で戦争をする」未来が待っているのだとすれば、随分矛盾した話だと言わざるをえません。

結局のところ、改憲推進派の本音は、日本を軍事的にも強大な「大国」にしたい、ということに尽きるのでしょうが、私たちは、そのような思惑こそ、かつて日本を戦争へと突き進ませる原動力となったことを、今一度思い返すべきではないでしょうか。


政府・与党の「国民投票法案」は、このように危険な思惑を隠しているだけでなく、法律的に見ても多くの問題を抱えています。第1に、国民投票が成立するための最低投票率の規定が設けられていないことです。憲法改正は、国のあり方の根幹に係わる重大な問題ですから、「国民が本当に改正に賛同しているのか」をきちんと確認する必要があります。

しかし今回の法案には、最低投票率の規定がないため、極端な話、投票率が20%しかなかった場合、その過半数の10%強の賛成だけでも、改正が成立してしまう恐れがあるのです。

問題点の第2は、国民投票運動における宣伝広告のあり方です。
国民投票が実施されることになれば、賛成・反対の各陣営によって「選挙運動」ならぬ「国民投票運動」が展開されることになります。今回の法案では、この国民投票運動に際し、公平さの観点から、投票日14日前以降のテレビ・ラジオ広告を禁止する旨が規定されています。
しかし、逆に言うと14日前以前は野放しの状態にあるわけで、豊富な資金力を持つ財界などが、金にあかせてテレビのスポットCMを買い占め、改憲のキャンペーンを実施して、世論を誘導してしまうことも考えられるのです。

第3の問題点は、公務員や教職にある人々が、「政治的行為の禁止」の規定により、国民投票運動に参加できなくなる点です。
この規定により、500万人に及ぶ人々が、憲法改正の問題に関する発言や行動を禁じられてしまいます。

特定の候補者を選ぶ、通常の選挙ならいざしらず、(それでさえ、過度の規制は、憲法違反だという指摘があります)国民全ての未来を左右する「憲法改正」の問題に関しては、誰もが自分の意思で自由に活動できるよう、認めるべきではないでしょうか?

国民投票法案には、この他にも沢山の問題点があり、憲法改正のための公正公平なルールと呼ぶには程遠い状況にあります。
もしこのような法案が通れば、時の権力者にとって都合のいい、形だけの国民投票が行われるようになってしまうでしょう。


私たちは真に国民の意見を反映しうる仕組みを作っていくためにも、今、声を上げていかなければならないのです。